バイ菌と言われるものには、ウィルス、細菌、真菌(カビ)、寄生虫が挙げられますが、皮膚から膿が出るような場合は、細菌が主な原因として考えられます。
少量の細菌が傷口につくと、潜伏期と呼ばれる期間(数日を経て、細菌数を増やしながら広がる時間)を経て、痛みや赤みが伴い、感染が成立します。身体の防御反応や、バイ菌に関係なく傷が治るなどで、大事に至らないことが多いのですが、細菌が死滅しない環境では、感染が進行してしまいます。
当院での治療の考え
感染の原因となる細菌を取り除くことが最初の治療となります。
その方法として以下の①〜④を行なっていきます。
① まずは細菌が沢山含まれるであろう膿や不良組織を排除(切開排膿、デブリードマン)していきます。
② 傷を洗うことで、少しでも細菌数を減らしていきます。
③ 殺菌作用のある軟膏を塗ることで細菌の増殖を抑えていきます。
④ 抗生剤内服で細菌を排除していきます。
大事なのは①と②です。感染を治すには、感染創が外に露出した状態が理想です。また汚れたものは排除する必要がありますので、露出した傷を適宜荒い、不必要なものを物理的に排除する必要がります。
③④は必要な治療ですが、膿が出るほどの感染にでは、捕捉的な面があります。
そして軟膏や潰瘍治療剤などを必要に応じて使い分け、傷表面の血流が保たれている環境を作ることで、キズ自体に治る勢いをつけさせていきます。
以下によくある皮膚感染を挙げていますが、基本的には治療①〜④を行なっていきます。
感染性粉瘤
粉瘤が炎症を起こすと、赤く腫れ、強い痛みも伴います。皮膚が袋状に体の中に潜っているのですが、この袋が敗れ、中の老廃物が漏れ出し炎症が起きていることが原因のことが多いのです。感染による痛みもありますが、どちらにしてもそのままでは抗生剤、軟膏などは効かず、まずは内容物や膿を出し、炎症した状態を落ち着かせます。
毛嚢炎
毛穴が細菌感染を起こしたものです。毛根周囲に細菌感染が起こってしまったもので、癤(せつ:単数の毛嚢炎)や癰(よう:毛嚢炎が複数連なったもの)などと呼ぶこともあります。大きく膨らむ様になったものではなかなか良くならず、放っておくと付近のリンパ節が腫れたり、毛穴から膿が漏れ出してきたりします。その様な場合はやはり排膿を優先的に行う必要があります。
耳瘻孔、毛巣洞の感染
耳瘻孔や毛巣洞は、皮膚の奥へと皮膚で覆われた細いトンネル状のものができた状態で、トンネルの先は行き止まりになっているため、この中は不衛生になりがちです。この様なところに感染が起こると、トンネルの中表面は血流が乏しいため自浄作用が働かず、あっという間に感染が拡大してしまいます。
膿が出ると一時的に炎症は治ることもあり、ついついそのままにしてしまいがちで、感染を繰り返してきたという方も多い疾患です。
軽い炎症程度であれば、病巣部である皮膚のトンネルを取り除くことで、積極的に治していきます。感染症状がひどい場合は、やはり切開排膿が第一選択になっていきます。
とびひ
小学生以下の子供に多いのですが、足や手をついついかきこわしていまし、ジクジクした傷(皮膚びらん)があちこちにできてしまう状態です。感染が疑われますので、抗生剤入りの軟膏を使って治していきます。
蜂窩織炎(ほうかしきえん、蜂巣炎)
小さな傷からバイ菌が入り、皮膚や脂肪などの皮下組織に細菌感染が波及してしまった状態で、広範囲の赤み、熱感、痛みが伴います。侵された組織を顕微鏡で覗くと蜂の巣(蜂窩、蜂巣)の様に見えるため、この様な呼ばれ方をしています。
かき壊し、ケガなどのささいな傷から細菌が入って起こるのですが、きっかけとなった傷が確認できないことも多いです。まずは抗炎症剤や抗生剤の内服で様子を見ていきますが、膿が溜まっている様なら排膿を行っていきます。
シャンプーやリンス、ボディーソープなどがついても、最後にシャワーですすげば問題ないということで、傷を濡らしていいなら、入浴についてはそんなに支障がなさそう。
傷が治る条件が十分揃っているのになかなか治らない場合は、バイ菌の培養検査をして、原因を同定していき、より良い治療法や抗生剤に的を絞っていきます。
また粉瘤や耳瘻孔などでは、感染・炎症が落ち着いても高率に再発しますので、タイミングをみて原因疾患の根治術をするように勧めています。