まつ毛は、目に入るほこりを防いだり、風や異物を感じる触覚としての役割など、外的要因から眼球を守る役目をしています。
このまつ毛が眼球にあたる逆さまつげは、‘睫毛内反症(しょうもうないはんしょう)’と呼ばれ、痛みや視力低下などさまざまな不都合をもたらします。
● 目が充血する
● 涙ぐんだ目となる
● さすような痛みがストレス
このような症状は逆さまつげの可能性があります。
逆さまつ毛は上まぶた、下まぶたの両方に起きる可能性があり、ほとんどがまぶたの目頭よりです。子供の頃から症状のあるケースや、大人になってから起こることもありますが、どちらにしても日常生活に支障があったり、眼球角膜に傷ついていることを眼科で指摘されたりしたら、早い時期での治療をお勧めします。
逆さまつげの原因
睫毛内反(しょうもうないはん)
まつ毛が全体に内側に生えることで眼球への接触刺激が起こります。
まぶたがぽっちゃりしているとまつ毛の根もとが内側にむいてしまい、症状が出ることがあります。よく目を擦るというお子様(未就学児)は、逆さまつ毛が原因かもしれません。体が成長してきた中学生以降になると、まぶたの形態がスッキリしてきて症状がなくなることもあります。瞼縁(けんえん)の内側へのまくれや蒙古襞の皮膚の余りが多いケースでは改善せず、根本的な治療が必要になります。
また目を開けるときにまぶたのフレームの役割をする瞼板(けんばん)がひっぱられて目が開きますが、そのひっぱる力は同時にまつ毛の付け根の組織(瞼板前組織)もひっぱります。まつ毛は目を閉じると目を覆う、目を開けると外に向くように立ち上がり視界から外れます。この組織がルーズになると力が伝わらずこの絶妙な動きが損なわれ、内反症の状態になります。この現象は大人になってから発生することもあります。
睫毛乱生(しょうもうらんせい)
おおよそ全てのまつ毛はちょうどいい角度に生えそろっているのですが、1〜数本がその列を外れて内側に生えている状態です。治療は列を乱している数本を永久脱毛していきます。(特殊な針を使った電気脱毛をすることで改善していくのですが、当院では行っていません。)
眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)
高齢の方で下まぶたに起こる症状で、内側に限らず、外側まで幅広くチクチクした症状を訴えることもあります。まぶたの全ての組織、構造がルーズになり、瞼縁(けんえん)の支持が弱くなり皮膚が内側にまくれてしまい、逆さまつげの状態になっています。
治療方法
目的はまつ毛の生える方向を外に向け、まつ毛が眼球に常時触れないようにすることです。目に被さるようなまつ毛がなくなり、きれいな眼差しの印象を与えることもありますが、程度を誤ると、不自然なパッチリまつ毛や、まぶたの縁が眼球と密着しない外反症と呼ばれる状態になるため注意が必要です。
上まぶた
内反症手術
二重のラインにしたい位置で皮膚切開をしていきます。瞼板前組織と呼ばれるまつ毛の土台に位置する組織をスッキリさせたうえで、まつ毛側の皮膚を上にたくし上げるようにして、まつ毛が外を向くようにしていきます。
蒙古襞(もうこひだ)と呼ばれる目頭側の上まぶたの立ち上がり部分があります。一重の方ではこのつっぱりが強い傾向がありますが、この位置での逆さまつ毛では、つっぱりを解除する必要があるため、蒙古襞形成術、目頭切開を加えていきます。最終的な容姿は二重の状態となります。
埋没法
上眼瞼で症状の軽い逆さまつげに適応があります。糸を使って二重を作ることでまつ毛を外に向くようにしていきます。外向きへの矯正が弱いため、まつ毛の眼球への接し方が僅かな場合や時々チクチクするといった程度に適しています。こちらも最終的には二重の状態となります。
下まぶた
内反症手術
根本治療では、まつ毛の生えている皮膚とその下の皮下組織の位置関係を少しずらし、生える向きを変えていきます。目頭側の皮膚が目頭に被さるようにあり、これが原因であれば上まぶた同様に蒙古襞形成術、目頭切開を加えていきます。
まつ毛のすぐ下の皮膚に傷を作りますが、最終的な傷跡はほとんどわかりません。
ダイエット
下まぶたでは、ふっくらしたまぶたが内反を助長することがあります。子供などではそこまで太ってなくても、支持組織が弱いためまぶたに張りがなく、容易に逆さまつげになることがあります。軽度のものでは小学校高学年〜高校ぐらいまでに、顔の作りが変わることで症状が改善することがあります。
表情については、上まぶたの手術で二重になるのは、治療アプローチの関係上やむをえませんが、解剖学的には二重の方が逆さまつげになりづらく、永続的な効果を得るためには必須といえます。また逆さまつげ治療用の不自然な目つきの二重ということではなく自然な二重になるのであって、下まぶたの傷跡は、後々ほとんどわからないくらいになりますのでご安心ください。